ごあいさつ

日本精神障害者リハビリテーション学会第26回東京大会開催にあたって

大会長:田中 英樹(早稲田大学人間科学学術院)

このたび日本精神障害者リハビリテーション学会第26回東京大会を早稲田大学で開催するにあたり、歓迎のご挨拶を申し上げます。

早稲田大学は今年で創立136年になります。ここ早稲田大学の創設者、大隈重信は1905(明治38)年に渋沢栄一らとともにハンセン病者の母と言われるハンナ・リデルの支援を通して福祉実践の価値をとても評価していました。また、夫人の大隈綾子は、精神病者慈善救治会の初代会長(1905–1917年)でもあったことから、大隈重信は,日本最初の,世界的にもかなりはやい全国的な精神衛生団体である精神病者慈善救治会に熱心に肩入れをした,最大のパトロンであったと言われています。早稲田大学で本学会が開かれるのも何か縁深い思いが致します。

さて、本学術大会のテーマを、“拡げよう!ベストプラクティスのうねりを!!”に設定させて頂きました。この背景には、国際的に見て余りにも立ち遅れていたわが国の精神障害者支援、精神科医療やリハビリテーションが、近年ようやく改革に向かう変化を見せていることにあります。精神保健福祉士の誕生、入院中心から地域生活中心への流れ、障害者総合支援法の制定など、地域基盤の良質な医療、科学的な精神障害リハビリテーション、生活支援や就労支援などの障害者福祉施策の前進などに見られるように、この10年、20年は精神障害者支援にとって薫風の流れが形成されてきました。この間、各地で優れた実践が紹介され、本学会が2008年に創設したベストプラクティス賞を受賞する団体が10か所・地域に到達しました。本大会で、こうしたわが国の到達点を確認し、近未来図を描ければと思っております。知と希望を創造する本大会は、これからの精神障害者リハビリテーションの可能性を過去から学び、未来からダウンロードして探っていく機会にしたいと思います。

今大会は久しぶりに開かれる首都東京での大会であり、多くの方々がわが国の精神障害者リハビリテーションに関する実践と研究を発表し、活発な議論を深め、未来につながる発展のステップになればと考えております。大会当日は記念講演など各種講演をはじめ、学会主催シンポジウム、大会主催シンポジウム、一般演題、自主企画、市民公開講座、研修セミナーなどを企画し、多くの参加者をお迎えする予定で首都の力を結集して鋭意準備致中です。会員はもとより、非会員の皆様方を含め、多くの研究発表や実践報告にエントリーして頂きたくお願いするものです。

どうか多くの皆様のご参加をお願いすると共に、早稲田大学で皆様とお会いできることを心から楽しみにしております。

ご挨拶

副大会長:白石弘巳
(埼玉県済生会鴻巣病院 東洋大学名誉教授(平成30年7月以降))

このたび、日本精神障害者リハビリテーション学会第26回大会に関わらせていただくことになりました。田中英樹大会長とは、35年以上前、川崎市内の病院勤務の時、保健所の精神保健相談でご一緒しました。岩崎香実行委員長とは、約20年前に東京都社会福祉協議会の福祉サービス運営適正化委員会の委員としてご一緒したことを覚えております。私は臨床医としてスタートし(起)、東京都精神医学総合研究所に転じ(承)、東洋大学で学生に精神保健福祉を教え(転)、今年の4月から再び臨床の場に戻りました(結)。職業的キャリアの最後の節目の年に、長い間ご交誼をいただいたお二人から声をかけていただいたのも何かの縁と考え、微力を尽くさせていただくことといたしました。

私は、ひきこもりがちな人のお宅への訪問や、家族会会員の方々から相談をお受けする経験をしてまいりました。そうした経験を通じ、専門職はもっともっと当事者の声に耳を傾けなくてはいけないと感じるようになりました。今でも「脳」を治療することに集中した結果、患者さんを苦しめ、家族を心配させている例があるように思います。患者さんが薬嫌いになったり、再発時に入院を拒否したりすることは、実は当たり前のことではなく、現在の精神科治療の問題点の反映であるとの反省に立って、真剣に改善策を検討すべきときにきています。

40年前、Engel,G(1977)が疾患の病態の理解や治療はBio-Psycho-Social の三つの次元を踏まえるべきことを提唱し、大方の支持を得ました。私は、日本の現状を見るにつけ、EngelがBio-Psycho-Social modelではなく、Socio‐Psycho-Bio modelと名付けてくれていたら、精神科臨床へのいわゆる社会モデルの浸透がもっと早まったのではないかと思っています。もっともEngelも、ここにいうPsychoとかSocioを念頭に入れるとはどのようなことであるのかについて具体的に記しておらず、それを精神障害リハビリテーション分野で追求することが本学会の存在意義となります。ざっくり言えば、Psychoの目標は「ありのままの自分を肯定的にみることができること」、そしてSocioは「ありのままの自分でいられる環境」ということになるのではないでしょうか?本大会は「拡げよう!ベストプラクティスのうねりを!!」をテーマに掲げました。たくさんのベストプラクティスを通して、精神障害リハビリテーションが目指すPsychoやSocioがより鮮明に見えてくるに違いないと、大いに期待しております。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

日本精神障害者リハビリテーション学会第26回東京大会へようこそ!

実行委員長:岩崎 香(早稲田大学人間科学学術院)

この度早稲田大学において、日本精神障害者リハビリテーション学会第26回東京大会を開催させていただくこととなりました。実行委員長という大役に今からプレッシャーを感じております。田中大会長と私が普段社会福祉士の養成を行っている人間科学部は埼玉県所沢市の山間地域にございます。そちらに皆様に来ていただくのは申し訳ないということで、早稲田キャンパスの国際会議場にて開催させていただくこととなりました。メイン会場である国際会議場は井深大記念ホールとも言われています。ホールを早稲田大学に寄進した井深氏の名前を冠する会議場です。井深氏は第一早稲田高等学院、早稲田大学理工学部のOBで、ソニーの創始者のひとりとして有名です。次女が知的障害だったということで、障害者施設の設立にもかかわったとされており、社会貢献にも力を注いだ方だったそうです。その会場に日本各地から精神科医療、保健、福祉領域の実践家、研究者、当事者、ご家族の皆様が来られると考えるだけでドキドキしますが、大会の開催が本学の学生たちにとっても大いなる学びの場になればと期待しております。

昨今の医療、福祉現場は目まぐるしい変化の時代を迎えており、その実践にも柔軟性や多様性を求められているように感じます。忙しい日常の中で、少し立ち止まって実践を振り返ったり、新たな実践へのヒントを得ていただけるような場になればと思っております。

昨年の久留米大会から、口頭演題、ポスターともに、研究と実践報告を分けて募集していますが、本大会もその方法を踏襲することにいたしました。テーマがベストプラクティスですので、実践報告大歓迎です。たくさんのご応募をお待ち申し上げております。

懇親会は大隈講堂の隣にあります大学生協にて開催します。実行委員の皆様の力をお借りしながら、心温まるおもてなしができればと思います。

また、本学会の参加費に関しましては、学生さんや障害当事者の方にもたくさんお越しいただきたいということから、新たな金額設定を設けました。それぞれの地域でのベストプラクティスをひっさげて、第26回大会にぜひ、お運びいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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