ご挨拶

平成28年10月末日

日本ハイパーサーミア学会第34回大会の開催にあたって

大会長 古倉 聡
(京都学園大学健康医療学部 教授)

この度、日本ハイパーサーミア学会第34回大会を京都において開催させていただくこととなり大変光栄に存じております。京都での開催は,2012年の第11回国際ハイパーサーミア腫瘍学会との合同開催以来5年ぶりです。(第11回ICHO大会長:吉川敏一先生、第29回JCTM大会長:近藤 隆先生)

近年、医学・医療の分野では、癌の発癌機構、癌病態、癌の転移⋅進展のメカニズムの解明、新規抗がん剤、分子標的治療薬、放射線治療用の医療機器などがめまぐるしく進化しており、さらにそれに加えて、ここ数年免疫チェックポイント阻害剤の研究が急速に進み、すでに一部の癌腫では、臨床応用され、免疫療法への期待が大きくなってきております。それにより、ハイパーサーミア学会でも、従来の基礎・臨床研究に加えて、免疫チェックポイント阻害剤を代表とする、新しい癌治療法との併用効果や副作用軽減の可能性についての研究も急速に進みつつあります。

一方、実際の医療現場においては、癌の3大治療法といわれる手術⋅放射線⋅抗癌剤の新たな開発がめまぐるしく進んでいるにもかかわらず、癌による死亡者数が増加の一途であるという現実があります。その理由の一つが、癌の発見・診断がかなり進行した状態でなされている症例がいまだに多いことが挙げられます。このような場合の患者の予後はかなり悪いのが実状です。ただ、診断をされてから、急速な癌の進行を認めない場合や、1st lineの治療がある程度奏功した場合(癌の進行速度を少しでも緩やかにできた場合)には、その後の治療次第では、かなり長期の生存期間を得られる症例が増えてきているのも事実です。その様な状況の中で、本大会のメインテーマは、“ー「進行がん」を「慢性疾患」にー”とさせていただきました。癌の病態を十分に把握したうえで、これまでの治療内容を振り返り、その患者に適した癌治療の実践を施行選択していくことにより、「進行がん」を「慢性疾患」としてとらえることが可能だと感じております。もちろん、この過程にハイパーサーミアは、必須です。本大会では、会員の先生方が1度や2度は経験されておられるであろう「進行がん」を「慢性疾患」として捉えられる治療法について、模索していただきたいと思います。

特別講演には、「がん」に対して、標準的な治療を受けられたのちに、「慢性疾患」と捉えて(ご本人の気持ちはわかりません)日々活動されておられるアグネス・チャンさんにご講演をお願いいたしました。我々医療者が、「進行がん」を「慢性疾患」の状況に持ち込めたとしてもその時の患者さんの気持ち(慢性疾患と医師側がとらえていても、患者は我々の想像を超えた不安感をお持ちかもしれない)を理解する必要があると考えました。

また、実際には、「進行がん」を「慢性疾患」にまで持っていくのは、かなり困難なことであり、そのためには、革新的なハイパーサーミアの進歩、あるいは、全く新しい概念の治療法が必要となります。そのきっかけとして、我々ハイパーサーミア学会員が勉強しておくべきものに「プラズマ」を一つあげてみました。現在研究開発が注目されている分野です。本大会では、招待・教育講演に、名古屋大学の堀 勝先生にお願いし、「プラズマ科学とその医療への展開」というタイトルで、ご講演をお願いしております。ハイパーサーミアを少し異なる角度からみることで何か新しい発見があるかもしれません。

以上のように各方面の先生方の全力投球より、“ー「進行がん」を「慢性疾患」にー”をより多くの患者にもたらしたいと考えております。新規性の高いご発表と積極的な意見交換を切に願っております。

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