第32回日本臨床微生物学会総会・学術集会を担当するよう仰せつかり、ご挨拶申し上げます。
一般社団法人日本臨床微生物学会の会員の皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
本学会は創立から30年代に入り、会員数も4,000人に達しつつあります。この間、著しく多様化する感染症に対し、診療や検査法も進歩してきました。特に遺伝学的検査による病原体、病原因子および薬剤耐性の検出、質量分析法による微生物の同定技術の実用化は著しく進歩しています。遺伝学的検査の中でも核酸増幅法は、検体の前処理が不要な全自動検査システムが日常検査に導入されてきました。更にベッドサイド検査として行えるものも登場しつつあります。抗菌薬治療においても、国際的に標準的な用法・容量に基づいた使用法の改定、少ないながらも新規の抗微生物薬が開発され、新しい時代に入ったと言える状況が実現しています。
しかしながら、従来からの検査がこれらの新しい検査に入れ替わるわけではありません。患者検体の塗抹検査は細菌や真菌感染症の診断や初期治療の方針決定に極めて有用です。培養検査、同定検査および薬剤感受性検査は、治療の評価や最適治療の決定に必須です。迅速、高感度、特異性に優れる特徴から、核酸増幅法による網羅的な病原体検出システムが注目されます。技術的には全てに応用可能ですが、経済性の点から限界があります。また、診療においてはこれらの新しい技術をどのように用い、どのように結果を解釈するか、新規の抗微生物薬を適切に使用するためにはどうしたら良いか、と言うことが重要なテーマとなっています
このような状況の中、私たちは感染症診療と検査の専門集団として、各検査の特徴を活かした合理的な検査を追求する役割が求められています。最近、diagnostic stewardshipやantimicrobial stewardshipという言葉を目にしますが、全く新しい概念ではなく既に取り組んでいる事項と思います。そして、日常診療や検査をサイエンスの視点で見つめる研究心も養う必要があります。
来年の総会では、最良の感染症診療を提供するには何が必要か、検査は従来の検査と新しい検査をどう組み合わせて最適化し、診断を導き出す提案ができないかを考えてみたいと思います。現在、上記の内容を具体化し、実り多い企画とすべくプログラム委員会で鋭意準備中です。
会場であるパシフィコ横浜Northは、2020年4月に竣工します。来年は新しい会場で活発に議論していただき、次の医療へ繋がるような学会にしたいと考えております。
多数の皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げております。
- 総 会 長:
- 三澤成毅(順天堂大学医学部附属順天堂医院 臨床検査部)
- 副総会長:
- 細川直登(亀田総合病院 感染症科)