このたび、第58回日本母性衛生学会総会・学術集会を平成29年10月6 日(金)と7日(土)に、神戸国際会議場および神戸国際展示場2号館において開催させていただきます。私と教室にとりまして、大変に光栄なことと存じます。
神戸大学産科婦人科学教室として、東条伸平教授が初めて第10回学術集会を昭和44年11月に開催しました。秘書室にあった薄茶色の同門会誌を紐解いて、教室からの発表は特別講演の「妊娠の成立」と他に「産褥の性機能」や「新生児奇形の実態調査」であった歴史を知りました。つぎに望月眞人教授は第31回学術集会を平成2年10月に開催し、会長講演「胎児と母体のコミュニケーション」、一般演題290題および出席者数1800人余をもって、見事盛会裡に学術集会を成功させました。
そして、教室にとって3回目となる第58回学術集会のメインテーマを私は、「予知予防と心の支え」といたしました。これまで産婦人科医師として私が医療に従事した経験の中で、いわゆる重症、難治性、治療抵抗性と表されるエビデンスのあるガイドライン的治療方法が全くない病気に一医師として対峙し、患者の立場で感じたことを今回のテーマといたしました。数字と確率の説明によって患者不安を軽減し治癒させることは容易ではない臨床の現場を大学病院で長らく経験してきました。こうなる前に「予知や予防」カウンセリングや説明、なってしまった後の「心の支え」がいかに大切かを痛感しました。「患者と家族への支援」は医療における大事な柱です。母性衛生に関わる医療、助産、看護、保健および行政の多職種協働に依ってこそ効果的な支援が可能になるのでしょう。
私たちは、1年半以上前から兵庫県母性衛生学会会員からなる学術集会実行委員会を組織し、専門の意見を取り入れながらオール兵庫でプログラムを企画しました。招聘講演は同志社大学 佐伯順子教授によります「近代化のなかの出産と女性-明治大正期のメディアにみる『母性』」、会長講演「母子感染を予防しよう」の他、5つの教育講演および7つのシンポジウムにおいては、母子感染、不育症、性差、性的マイノリティ、虐待と暴力、障害と家族、メンタルヘルス、子育て支援などについて、疾患の理解と社会的現状および支援のあり方に焦点を当てながら、実行委員が心を込めてそれぞれのテーマを企画しました。日常の医療、助産、看護と保健に明日から役立つプログラム内容を目指しました。市民公開講座1日目は、シンポジウム形式で「乳がん卵巣がん~その遺伝性と診断から予防・治療そして乳房を取り戻すまで」、2日目は若手学生を多少意識して、沢松奈生子さんの「ウィンブルドンの風に誘われて~世界を転戦するために必要なフィジカルとメンタル」を準備しました。さらに実践講座として、日本母体救命システム普及協議会公認「母体救命ベーシックコース」を4コース開催いたします。そして最後に、一般演題は532題もの応募をいただきました。沢山の演題を応募してくれました会員の皆様、ならびにこれまで多大なご支援とご助言いただきました実行委員会と母性衛生学会役員・事務局の皆様に心から感謝申し上げます。
10月は暑さ過ぎて秋風爽やかな神戸となります。北野坂、異人館、南京街、旧居留地、モザイク、神戸ビーフ、エスニック、洋菓子、有馬温泉とサンバ、ちょっと足伸ばして宝塚歌劇と白鷺城は、素晴らしい癒しとなることでしょう。
多くの皆様と神戸でお会いできますことを教室員一同、心から楽しみにしております。
平成29年7月吉日
第58回日本母性衛生学会総会・学術集会
会長 山田 秀人
(神戸大学大学院医学研究科 産科婦人科学分野教授)