大会長挨拶

第28回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会 大会長 栗田賢一(愛知学院大学歯学部顎口腔外科学講座)

このたび、第28回日本顎関節学会総会・学術大会を愛知学院大学歯学部顎口腔外科学講座が担当し、開催することになりました。学術大会の期日は2015年7月4日と5日で、会場は名古屋国際会議場です。名古屋での前回開催は2006年(第19回日本顎関節学会総会・学術大会、大会長:亀山洋一郎)で、第1回国際顎関節学会を併催いたしました。私は準備委員長として海外から Daniel Laskin, P-L Westesson, Dorrit Nitzan等の顎関節疾患研究第一人者を多く招きました。当時は日本の顎関節疾患治療がようやく世界に追いついた時期であったと思います。以後、9年を経て、顎関節疾患治療分野では日本独自の方向性を持ち始めたように思います。

今回は「顎関節部および関連疼痛」と「顎関節脱臼」に焦点を当て、大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 クラウンブリッジ補綴学分野が担当される第20回日本口腔顔面痛学会学術大会との共同開催であることから、メインテーマを「現代社会から求められる顎関節疾患・口腔顔面痛への対応」としました。

「顎関節部および関連疼痛」に関しては、日本口腔顔面痛学会と共催とし、会員が口腔や顎顔面の痛みに関して多方面から学べるように企画しました。特に、顎顔面痛に関しては、従来からの保存的・外科的なアプローチでは治療が奏功しない例も多くあります。当院ではこうした患者に対して精神科医師とのリエゾン治療で効果を得ており、現在、共同研究も進めていますので、その治療チームリーダーである名古屋大学医学部附属病院精神科 尾崎紀夫教授に「顎顔面痛および不定愁訴に関する精神科的アプローチ」について特別講演を依頼しています。私の施設でも「顎関節部および関連疼痛」をテーマとしてきましたので。この機会にこれについてまとめてみたいと思っています。

「顎関節脱臼」については、超高齢社会となり現在、増加傾向にあります。しかしながら、効果的な治療は確立されてはいません。高齢者で見落とされがちな陳旧性脱臼や若い人でも日常生活に支障をきたす習慣性脱臼があり、社会から治療を求められています。特に顎関節脱臼が認知症と併発した場合には、なんら効果的な治療が施されずに放置されているのが現状です。日本顎関節学会としても顎関節脱臼を取り上げるべき課題として、今回はシンポジウム形式で企画しました。

従来、第2会場で一般口演が行われていましたが、今回は一般演題をポスター発表として、多くの会員が第1会場と第2会場での講演、シンポジウム、セミナーに参加し活発な議論ができるように企画しています。

会員懇親会は7月4日に学会会場内で開催をします。名古屋の夏はとても蒸し暑いです。懇親会では冷えたビールと冷酒を堪能してください。本学会がご参加の皆様に有意義なものとなるように最善を尽くしますので、多くの方が参加されるようにお願いいたします。

第20回日本口腔顔面痛学会学術大会 大会長 矢谷博文(大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 クラウンブリッジ補綴学分野)

このたび,「現代社会から求められる顎関節疾患・口腔顔面痛への対応」をメインテーマに掲げ,第20回日本口腔顔面痛学会学術大会・総会を平成27年7月4日(土),5日(日)の両日,名古屋市にあります名古屋国際会議場において,日本顎関節学会との共催で開催する運びとなりました.

日本口腔顔面痛学会と日本顎関節学会の共催の学術大会が開催されるのは平成21年に続いて2回目ですが,当時日本口腔顔面痛学会は学会に昇格したばかりのまさによちよち歩きの頃であり,対等な立場での共催は今回が初めてと言ってもよいかもしれません.その意味において,今回は以前にも増して新鮮な学術大会になるのではと期待しております.両学会に所属している会員も多く,研究対象とする疾患の多くも共通していることからいうと,むしろ共催は遅かったと言えるのかもしれません.

今回の日本口腔顔面痛学会側の催しとして特別講演1題,教育講演1題,シンポジウム1題,症例検討会1題,さらに有料のハンズオンセミナー1題を企画しました.また,一般演題の発表形式に関しては,日本顎関節学会大会長の栗田賢一教授のご意向によりポスター発表のみとし,十分にディスカッションができる形式としました.

1日目午前には,特別講演として米国ケンタッキー大学歯学部Orofacial Pain CenterのProf. Charles Carlsonをお招きし,慢性疼痛の自己管理法の意義とその具体的な手技に関してお話を聞かせていただく予定です.九州大学の古谷野潔教授に座長の労を取っていただきます.Prof. Charles CarlsonはClinical Psychologistであり,Orofacial Painの領域の世界的リーダーの一人で,同centerのdirectorであるProf. Jeffrey Okesonを長年にわたり支えてきました.慢性疼痛の管理には,歯科医師と臨床心理士のコラボレーションが必須と思われますが,同centerは二人の協力によりいわゆるリエゾン外来を世界に先駆けて立ち上げてきたことでよく知られています.慢性疼痛の自己管理法を患者に指導することの重要性を我々はよく理解していますが,いざどのように指導するかという点については,まだまだ勉強不足であることは否めません.ご講演を通じて我々会員に具体的な慢性疼痛の自己管理法を教授いただけることは,会員にとってまたとない機会になるのではと期待しております.午後には,シンポジウム「慢性の痛みに対する薬物療法の基礎と臨床」を開催します.本シンポジウムでは,日本大学の今村佳樹教授を座長として,基礎的な立場から東京歯科大学の笠原正貴先生に,基礎ならびに臨床的な立場から日本大学の野間 昇先生に,一般臨床の立場から東京都でご開業の安藤彰啓先生にご講演いただき,現在の慢性痛に対する薬物療法の現状と問題点,さらには将来展望についてご講演をいただく予定です.シンポジウムを通じて健康保険という制約がある中で慢性疼痛を抱える患者に薬物を用いてどうアプローチしていくべきかについて論じていただきたいと考えております.本シンポジウムの後,ハンズオンセミナー「筋触診についての実習」を開催いたします.本ハンズオンセミナーでは,九州大学の築山能大先生を座長として,慶應義塾大学の和嶋浩一,日本大学松戸の小宮山 道と大久保昌和,大阪大学の石垣尚一,日本歯科大学の原 節宏,徳島大学の松香芳三,川崎市立井田病院の村岡 渡,北海道大学の有馬太郎の諸先生を講師に迎えて行います.筋触診は咀嚼筋痛障害診断の要であるにもかかわらず,その手技を正確に学ぶ機会はありそうでないのが現状です.本ハンズオンでは,DC/TMDにて解説されている筋触診法をベースに実習を行い,参加者に正しい筋触診法を身に着けていただきます.

2日目午前には,症例検討会「顎関節症・口腔顔面痛症例検討」を開催します.慶應義塾大学の和嶋浩一先生を座長とし,慶應義塾大学の西須大徳,日本大学松戸の大久保昌和,川崎市立井田病院の村岡 渡の諸先生方にそれぞれ症例を提示していただき,討論を行うことで顎関節症患者や口腔顔面痛患者を診断し,治療するうえでの問題点や注意点が浮かび上がるのではと期待しております.また,午後には教育セミナー「顎関節症と痛み関連疾患の鑑別診断」を開催します.座長は午前中の症例検討会に引き続いて慶応大学の和嶋浩一先生にお願いし,講師にも症例検討会に引き続いて日本大学松戸の大久保昌和,川崎市立井田病院の村岡 渡両先生に再びご登壇いただき,静岡市立清水病院の井川雅子,日本大学松戸の小宮山 道,九州大学の坂本栄治の諸先生方にも講師に加わっていただき,実際に各講師の先生方がご経験になった顎関節症との鑑別を要した口腔顔面の痛み関連疾患を症例提示していただく予定になっております.この教育セミナーは午前中の症例検討と対をなす企画であり,これら午前,午後の両企画に聴衆としてご参加いただくことで,会員の皆様方の診断力アップにつなげられたらと考えております.

今回の学術大会は日本口腔顔面痛学会と日本顎関節学会の共催大会ということで,非常に盛りだくさんの企画が用意されており,同一時間帯に複数の企画が並行して行われるため,どれを聴けば良いのか非常に迷われることになるかもしれません.その点は共催ということでご容赦願いたいと存じます.

それでは,多数の皆様のご参加を心よりお待ちしております.

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