大会長挨拶

令和3年(2021年)10月15日(金)、16日(土)の2日間にわたって、名古屋国際会議場において第64回秋季日本歯周病学会学術大会を開催いたします。今大会は、メインテーマを「歯周治療でおいしい人生をサポート」とさせて頂きました。超高齢社会において長きに渡りおいしく食事を頂くことは、人生を楽しむ上で肝要であり、歯周治療が果たす役割は大きいと考えております。さらに、サポーティブ治療を継続していくことで、さまざまな全身疾患の発症・進行の予防にも貢献できる可能性があり、患者さんにとっては“食事”と“健康な人生”を楽しむという二重の旨みを得ることができるのが“歯周治療”であることを患者目線で表現したテーマです。このテーマを達成するためには、歯周病学とそれに関連した免疫学・細菌学、再生医療、医歯薬連携(歯周医学)、IoT等多くの分野との融合による発展が必要であり、今大会では様々な観点から光を当て、多くの参加者に有益であるようなプログラム構成となるよう工夫いたしました。

大会1日目は、特別講演として、将棋名人を破ったAIプログラム「Ponanza」を開発した山本一成先生(愛知学院大学特任准教授)に「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか」をご講演いただきます。また、教育講演として、米国でFacultyとして活躍されている祖父江尊範先生(コネチカット大学歯学部口腔・診断科学講座)に「米国における歯周病学教育の現状」についてご講演頂きます。基礎研究に関するシンポジウムとして、「炎症性骨代謝に関する新しい潮流」と題し、骨代謝の研究で近年大きな発見を報告されている石井優先生(大阪大学医学部感染免疫医学講座)、箭原康人先生(富山大学医学部分子医科薬理学講座)および塚崎雅之先生(東京大学医学部免疫学講座)にそれぞれご講演いただき、歯周病の骨破壊機序解明の一助としたいと思います。臨床に関するシンポジウムとして、「予知性の高い口腔機能回復治療の実践」と題し、新進気鋭の若手補綴医である和田誠大先生(大阪大学歯学部顎口腔機能再建学講座)、荻野洋一郎先生(九州大学歯学部口腔機能修復学講座)および上野大輔先生(上野歯科医院)にご講演頂き、患者さんのおいしい人生サポートのヒントになればと考えます。

大会2日目は、特別講演として、日本における歯周形成手術のエキスパートである瀧野裕行先生(医療法人社団裕和会タキノ歯科医院)に「審美領域における難症例攻略のキーポイント」をご講演いただきます。また、IoTに関するシンポジウムとして、「医療・健康ICTによる歯科医療の革新〜Society5.0時代〜」と題し、藤井信英先生(総務省情報流通行政局デジタル企業行動室)、森田晴夫先生(株式会社モリタ)および野崎一徳先生(大阪大学歯学部附属病院医療情報室)にご講演いただき、未来の歯科医療に関する方向性を示していただきます。医歯薬連携に関するシンポジウムとして、「歯周病と糖尿病の関係性を礎とした医歯薬連携の実際」と題し、水野泰弘先生(東海市歯科医師会)、佐野宏樹先生(東海市薬剤師会)および河村英徳先生(愛知県医師会)にご講演いただき、現在の状況と今後の課題を浮き彫りにしたいと思います。認定医・専門医教育講演として、「歯科における抗菌薬の適正使用(仮題)」と題し、山崎和久先生(理化学研究所生命医科学研究センター)と小松澤均先生(広島大学大学院医系科学研究科細菌学教室)にご講演いただき、歯周病患者の抗菌療法に関する基本原則について情報のアップデートをしたいと思います。倫理委員会企画講演として、当学会前倫理委員長をお務めになられた佐藤秀一先生(日本大学歯学部保存学教室歯周病学講座)に「学会における研究倫理申請について−申請書の書き方−」をご講演いただきます。スイーツセミナーとして、おいしい人生を過ごす上で重要な食事療法に関して、宇都宮一典先生(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター)に「歯科衛生士が知っておくべき糖尿病の食事療法の知識」をご講演いただきます。歯科衛生士シンポジウムでは、日本公衆衛生学会とのコラボレーション企画として、「新型タバコ時代の禁煙支援 背景にある歯科関連学会の取組」と題し、田淵貴大先生(大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部)、吉岡貴史先生(福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター)および中山洋平先生(日本大学松戸歯学部歯周治療学講座)にご講演いただき、歯周治療に重要である禁煙支援に関して考えたいと思います。歯科衛生士教育講演として、歯周治療の続発症として頻度の高い根面齲蝕に関して、「SPT期間中の根面齲蝕への対応について」と題し、松崎英津子先生(福岡歯科大学口腔治療学講座)にご講演いただきます。その他、ランチョンセミナーも含め多彩なプログラムを現在鋭意準備中です。

学術大会の参加者は歯科医師、歯科衛生士がほとんどであり、会期には新型コロナワクチンを接種済みであることを想定し、開催方式は、現地開催で出来るよう準備しております。新型コロナウイルス感染拡大による未曾有の事態で、このところ各種学術大会のWeb開催が続いており、現地における face to faceでの発表や討論が出来ない状況は、これまでに無い環境下での学術活動を強いられております。今大会の開催時期における周囲環境は、もちろん予測不能ではございますが、現段階で出来る会場内での感染防御策を講じ、久々に皆様と顔を合わせて議論する場を提供出来ることを願っております。また、ここ名古屋の地に赴くことが困難な方もみえることを想定し、現地開催後およそ1ヶ月以内にオンデマンド配信での参加が可能となるハイブリッド型開催を計画しております。

名古屋での学術大会の開催は、29年ぶりとなります。現地に来て頂いた折には、感染対策に配慮頂きながら、大会メインテーマの如く参加の皆さんには多くの名古屋名物(味噌煮込みうどん・ひつまぶし・味噌カツ・手羽先・台湾ラーメン等)を静かに“おいしく”味わって頂き、学修と共に充実した時間をお過ごし頂ければと思っております。

多数の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

第64回 秋季日本歯周病学会学術大会 大会長
愛知学院大学歯学部歯周病学講座
三谷章雄

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