大会趣旨
第25回 日本統合医療学会(京都大会)
趣 旨
18世紀半ばに起こった産業革命以降から今日に至るまで、近代医療は目覚ましい発展を遂げました。この期間は、人類が地球環境や生態系、気候や地質に重大な影響を及ぼす様になった新たな地質時代であり、人新世(Anthropocene)と呼ばれています。また、国連では、持続可能な開発のためにSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を掲げています。医療においても持続可能性が問われる時代が到来しようとしています。
日本では、人口構造の変容による超少子・高齢・人口減少・独身社会の進展に伴い、社会や疾病の構造が変化し、医療システムにも影響を及ぼしています。そのため、これまでの医療システムだけでは、多様な医療的、社会的ニーズに対応できず、その枠組みを補い、発展させた医療システムが希求されるようになりました。その要望に応えようとする医療システムが、近代医療と共に伝統医療や補完代替医療を併用する「統合医療」による「医療モデル」と「社会モデル」の実践です。
「統合医療」の「医療モデル」は、病院や診療所での患者を中心とした疾病の治療を目的とし、「社会モデル」は、日常の生活の場での生活者を中心とした疾病予防や健康増進を目的としています。「統合医療」の「医療モデル」と「社会モデル」は、相補いながら機能し、地域住民の生活の質(QOL)の向上、尊厳の保障、健康格差の是正、地域経済の活性化、地域コミュニティの創出に寄与するものと期待されています。
日本統合医療学会の学術大会は、本大会で25回を迎えます。四半世紀の節目の学術大会であるとの認識のもとに、大会テーマを「統合医療の未来 -エコロジー・自然治癒力・ソーシャルキャピタル- 」としました。多発する自然災害、ブロックチェーンや5G、ロボティックスやAIなどの発展に伴う技術革新による産業構造の変貌、そしてこの度の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの襲来など、不確実な社会の到来を見据え、未来を拓くキーワードとして、①エコロジー、②自然治癒力、③ソーシャルキャピタルを取り上げました。これらのキーワードに込めた思いは、持続可能な社会を目指した自然と人との調和への回帰であり、自然免疫を始めとする自然治癒力の再認識、そして人と人とが交流する場の重要性への気づきと実践です。それらの底流にあるのは、私たちの郷愁であり、古いものとして捨て去ってきたものです。今こそ、これらを、人類の英知である人文・社会・自然科学の最新の知見によって新しく蘇らせることは、「統合医療の未来」を拓く大きな力になるものと確信しています。まさに「温故知新」の精神で、「統合医療の未来」の地平を拓こうとする挑戦的な学術大会を展開する所存です。
第25回日本統合医療学会(京都大会)
大会長 矢野 忠
大会実行委員一同