会長ご挨拶

第51回日本アルコール・アディクション医学会学術総会を、2016年10月7日(金)と8日(土)の2日間にわたり、タワーホール船堀(東京都江戸川区)にて開催させていただくこととなりました。

本学会は、日本アルコール・薬物医学会と、日本依存神経精神科学会との合併により、2016年に誕生するものです。近年、依存の問題が、アルコールを含めた精神作用物質のみならず、ギャンブルやインターネットゲームなど、いわゆるaddictive behaviors (嗜癖行動;行動のアディクション)にも広がりつつあり、社会的にも大きな問題となっています。本学会は、その名称の示す通り、日本のアルコール・薬物・嗜癖行動関連問題研究の中心を担うものといえます。

今回は、新学会として初めての学術総会となります*。それを主宰させていただくことは身に余る光栄であり、なんとかこの大役を果たし、次回につなげられるよう、精一杯努力する所存です。初回の学術総会のメインテーマは、本学会が、精神医学、内科学、法医学、薬理学、病理学、衛生学、公衆衛生学、心理学、行動医学、依存臨床の最前線の方々など、非常に幅広い領域の方々で構成されているという点を生かしうる共通の問題として、「アディクション・サイエンス~ハーム・リダクションの観点から」とさせていただきました。これは、物質関連、非物質関連のいずれも、精神面の依存を中核症状として、身体面、精神面、社会面での多様な障害を引き起こしていることから、様々な角度から「ハーム・リダクション」(有害事象の低減)を可能にする方略を検討することが急務であると考えられたことによります。

アルコールについては、依然として医学的にも社会的にも大きな問題であり、平成25年に成立したアルコール健康障害対策基本法に則った有害事象の低減や、合併症としてのうつ病や自殺対策はどうあるべきかなど、議論はつきません。またタバコは、ニコチンそのものよりはその「溶媒」(煙)の健康への問題が言われて久しく、様々な方法で有害物質の低減が図られています。一方で、これら嗜好品が心身の健康や予防医学に貢献している面も無視できません。また、われわれの生活は、負の帰結の可能性覚悟での行動(広義のギャンブル)なしには成立しない面もあります。今回は、このような背景の中での有害事象の低減のありかたを探りたいと考えております。

会場である船堀は、荒川沿いの下町情緒あふれる地域であり、浅草、両国、向島など由緒ある場所と、東京スカイツリー、東京ディズニーランド、お台場など近代的名所にも隣接しております。ぜひ多くの皆様にご参加いただき、これら周辺地域も楽しみつつ、よい議論を重ねていただければと願う次第です。

本総会では、明日の臨床や研究に役立つ魅力的な講演やシンポジウムも数多く企画しております。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

*開催番号の「第51回」は、歴史の長い日本アルコール・薬物医学会のものを継承しております。

第51回日本アルコール・アディクション医学会学術総会

会長 高田 孝二(帝京大学文学部心理学科長)

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