大会長挨拶

日本義肢装具学会30年の歴史に新たな1ページを刻む第31回学術大会を、神奈川で開催できることを大変光栄に思います。義肢装具学会の前身である義肢装具研究同好会・義肢装具研究会は私の恩師である大川嗣雄がそれぞれ1回ずつ開催していますが、学会となってからの学術大会を神奈川で開催するのは初めてです。

本学会の初代会長を横浜市立大学医学部整形外科教授の土屋弘吉先生が務めたこともあって、横浜市立大学リハビリテーション科は本学会を特別に関係の深い学会と認識してきました。また横浜は、江戸時代後期に人気歌舞伎役者、澤村田之助の下肢切断術を行い、近代的な義足を装着し、舞台に復帰させたJames Curtis Hepburn(当時の日本では平文と記され、ヘボンと呼ばれた)が布教活動・医療活動を行った地でもあります。その活動は横浜市大医学部の前身となった横浜十全病院の医療にも多大な影響を与え、現在、医学部図書館の入り口には切断術の錦絵とともにヘボンの肖像と記念碑が掲げられています。大島智夫名誉教授による碑文には、『ヘボン博士は1858年に進んでアメリカ長老教会宣教医として渡日を決意され、46歳より77歳まで31年の長きに渡り横浜に滞在し医療と伝導に尽くされた。博士は横浜における近代医学のパイオニアとなられるとともに、高潔な人格と、豊かな教養と、日本を愛する情熱により、ヘボン式ローマ字の考案、和英辞典の作成、聖書の日本語訳等日本の近代文化に比類なき貢献をされた。隣人愛に裏付けられたヘボン博士の暖かい近代医療の精神こそ、横浜市立大学医学部の範とすべきである。』とあり、ここにも横浜と義肢装具学、リハビリテーション医学との縁を感じるのです。

今回の学術大会のテーマは『地域リハビリテーションにおける義肢・装具・支援機器』とし、サブタイトルをスポーツ、シーティング、社会参加といたしました。『地域リハビリテーション』は横浜市総合リハビリテーションセンターの活動を中心に、1980年代後半から横浜市大リハビリテーション科が臨床のテーマとして取り組んできた分野であり、義肢装具士は地域リハビリテーションの大きな枠組みの中で新たな可能性を見出し、活躍の場を広げるべきであるとの強い期待を込めました。

義肢装具学会はモノを通して多専門職が集い・学ぶという特徴を持っています。今回の学会運営には、神奈川で長く活躍し、学会活動の実績も豊富な義肢装具士、理学療法士、作業療法士、リハ工学士の方々に準備委員として参加いただき、オール神奈川の体制で、魅力あふれる学術大会の実現に向けて努力しています。

会場のパシフィコ横浜は国際会議数日本一(2013)のコンベンション施設で、利便性の高い会議場と、広い展示会場が特徴です。多くの参加者がゆとりのある空間で観て触れて感じていただけるような機器展示・機器プレゼンテーションを企画しています。

会場周辺のベイエリアだけでなく、動物園や水族館、美術館や歴史的建造物、そして充実のグルメとショッピングスポットなど、横浜は魅力的な観光都市です。また神奈川には、古都鎌倉、湘南・三浦の美しい海、七沢・箱根の温泉と素晴らしい観光地があります。会場で白熱した議論の後は、観光も楽しんでリフレッシュいただけるよう、ご家族で足をお運びいただければ幸いです。

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