会長挨拶

第67回NPO法人日本口腔科学会学術集会
会  長  今 井  裕
(獨協医科大学医学部口腔外科学講座)

第67回NPO法人日本口腔科学会学術集会を開催するにあたりご挨拶申し上げます。

日本口腔科学会学術集会は、1913年東京大学医学部歯科学講座に歯科医学懇話会として始まり、本年でちょうど1世紀の節目を迎えます。この伝統ある学術集会を記念すべき時に、私どもの教室で担当できますことは大変名誉なことであり、この機会を与えて戴きました学会役員、会員の諸先生方に衷心よりお礼を申し上げますとともに、教室をあげてこの重責を果たしたいと考えております。

日本口腔科学会は、既にご承知とおり日本医学会分科会に所属する唯一の歯科関連学会で、その主旨は「口腔科学に関する基礎的・臨床的研究を幅広く進め,医学・歯学の進歩と発展に貢献し,学術文化および医療福祉に寄与し,もって国民の健康増進を図る」ことにあります。従って、歯科関連の各専門領域の研究者、教育者、ならびに臨床医などが協力し、口腔に関する多方面にわたる学際的な活動を幅広く行っている点が大きな特徴です。このような中にあって、最近は専門領域に特化した学術集会が多くみられるようになり、本学会の存在意義を問う声さえ聞くことがあります。しかし、あまりに専門的に細分化された結果、大局を見失しない本来の目的を逸脱したような研究さえ見ることもあります。また、現在、口腔と全身との関わりが注目されていますが、歯科・口腔領域に関わる学術的情報を医科さらに社会へ向け、十分に発信しているとは言えないのが現状です。そこで、今学術集会では、学会創立100年を機に、今一度「口腔科学」の原点への回帰とともに、将来あるべき「口腔科学」を模索し、さらにbreakthroughが期待される企画を考えました。

この様な観点から、学術集会のテーマは、今日に至る100年を振り返るとともに、医学・歯学における、さらに社会における口腔科学の位置づけを見つめ直し、変化していくべきことを追求するため「拓く-新たなる口腔科学の創造にむけて-」とさせていただきました。次なる100年に向かい、そして次世代に向けて貴重な情報発信の礎になることができる、そのような場にしたいと思います.「口腔科学」の新たなる展開、今後のあり方などについて、活発な討議を期待しております。

そこで、プログラムでは、特別講演は学問・医療から離れグローバルな視野に立つ考え方をお聞ききしたいとの思いから、古美術鑑定家としてテレビ『開運!なんでも鑑定団』でもご活躍中の中島誠之助 先生に、ご講演をお願いいたしました。教育講演1は、近年めざましい進歩がみられている手術ナビゲーションシステムについて、ドイツにおけるナビゲーション手術の第一人者でありますProf. Dr.Dr. Wolfram Kaduk MD DDS に「Real Time Image Guided Navigation in Maxillofacial Surgery」についてご講演していただきます。このご講演により、わが国の顎顔面口腔領域手術においても本システムが普遍的となり、正確で安全な手術のための一助となれば幸いです。教育講演2では、われわれの領域で関心が高いテーマのひとつである歯の再生について、東京理科大学総合研究機構教授 辻 孝 先生に「次世代再生医療としての歯や唾液腺の器官再生」と題するご講演をいただきます。

シンポジウム、ワークショップにつきましては、関連学会のご協力を得て、シンポジウム1では、「歯周組織における再生医療」と題し、わが国における基礎ならびに臨床研究の最前線におられる先生方からご講演いただき、シンポジウム2では、「口腔癌の先端研究に基づいた近未来的治療戦略について」、口腔病理、歯科放射線、ならびに口腔外科の立場から論じていただきます。ワークショップでは、日本臨床口腔病理学会から「検査が拓く新しい可能性-口腔病理学的視点から可能性を探る-」、日本補綴歯科学会から「咀嚼を科学する」、日本歯科放射線学会から「画像から学ぶこと」など、それぞれのテーマについて、わが国第一人者の先生方から、最新の情報をご提供いただけるものと考えております。

また、日本口腔科学会設立100周年記念に連動したカウントダウン企画として、コーナーセッション「学会100年の歩み」と、学会創立100周年記念ワークショップ、―緊急提言―「次なる100年、患者にとって口腔医療はどうあるべきか」を企画いたしました。本学会の歴史を紐解くとともに、今回のテーマでもあります、「拓くー新たな口腔科学を創造するー」に繋がるような有意義な議論を期待しております。また、宿題報告や学会賞講演に加え、サテライトシンポジウムやランチョンセミナーも開催されます。それぞれの分野で研修、情報交換などが活発に行われるものと考えております。

一般演題といたしましては、450題と多くの演題をいただきました。これもひとえに先生方のお力添えの賜物と心から感謝申し上げます。しかしながら、その結果としてプログラムの進行上、一部の先生方にはご希望に添えない発表形式になってしまいました。どうか、先生方にご満足していただける有意義な学術集会の運営に努める所存ですので、事情をお察しの上、ご容赦のほどお願い申し上げます。

なお、第1日目の5月22日(水)には「臨床から基礎研究への展開~研究への誘い~」と題した学術教育研修会が企画され、引き続き開催されます会員懇親会では、栃木の美味しい地酒を、また、2日目の23日(木)には栃木名物の餃子を楽しんでいただきますよう「餃子とワインの夕べ」を準備しております。どうか、一人でも多くの先生にご参加いただき、懇親を深め「口腔科学の明日」について語り合っていただければ幸いです。

学術集会が開催されます宇都宮は餃子の街として知られていますが、ジャズそしてカクテルの街としても有名ですので、学術集会疲れは餃子でスタミナ補給するのみならず、日暮れた宇都宮の街でモダンに癒していただけるものと思います。そして、栃木のこの時期は緑鮮やかな季節でもあります。日光、那須方面には名所旧跡や湯質の良い温泉も豊富ですので、学会場より足を運ばれて、新緑鮮やかな栃木を満喫していただければと存じます。

最後になりましたが、本学会開催にあたりお世話になりました関係各位に心よりお礼申し上げます。

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