第51回日本作業療法学会
学会長 小林 正義
日本に作業療法士が誕生し50年が経過しました。この間に、日本の作業療法は国民皆保険制度のもとで主に医療の領域で普及・発展してきました。しかし、作業療法士の活躍が求められる場は医療に留まらず、現在では介護、障害福祉、特別支援教育、就労支援など広範囲に拡がっています。また、高齢人口の増加にともない、障害のある人達に限らず、健康高齢者の心身機能の低下を予防する視点が加わり、対象とする人々の生活機能に目を向け、活動と参加を促進する作業療法の役割はより一層重要視されるに至っています。
とくに認知症初期集中支援チームへの参画や、在宅医療・介護連携を含む地域包括ケアへの対応については、各都道府県や市町村において作業療法士が取り組まなければならない喫緊の課題であり、課題解決に向けた知識と技術を共有するとともに、作業療法が国民の健康回復と維持に貢献しうることを実証しなければなりません。
第51回日本作業療法学会では、このような時代の要請を踏まえつつ、新たな50年に向かって作業療法の可能性をさらに発展させるために、学会テーマを「作業療法の挑戦−多様化するニーズに応える理論と実践、Challenge of occupational therapy: Theory and practice for responding to diverse needs」としました。
作業療法の効果を検証する臨床研究のほか、地域住民の作業ニーズを明らかにする調査研究、作業をすることの意味や価値を探求する質的事例研究、作業療法の評価や支援機器等の開発研究、未知なる可能性を追求する作業療法の基礎的研究など、多くの演題が集まり、充実した学術大会となることを期待しています。